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第8章 データ通信による電子海図表示装置への情報表示の考察

 

全世界ネットワーク(インターネット)等による計算機相互間でのデータ通信など現状の技術レベルで可能なことは良く知られている。

インターネット、FAXサービス等、情報提供に使用する海図に電子海図のマップデータを利用できると都合が良い。沿岸航行援助情報システムで使うレーダーの映像情報を船舶が使っている電子海図と同じものにして沿岸航行援助情報センターから伝送するようにすれば、船側で使用している電子海図との整合性が良いし、また電子海図表示装置上に沿岸航行援助情報センターの情報を表示できたとしたら、陸上と船上側が同じ次元で情報を取り扱える便利さがあるだろう。そのために船で使う電子海図の画面上に情報表示を行うことと沿岸航行援助情報システムと電子海図表示システムのリンクを行うことについて検討した。

調査検討の結果、電子海図の画面を使っての情報表示は今後の検討課題とした。

その理由は、電子海図表示システムは国際的に定められた仕様に基づいて作られているので、電子海図表示システムの利用のためにはそれに合った処理ソフトを使用するパソコン上に用意しなければならないなど、パソコン種類毎にその開発費用がかかることである。

すなわち、電子海図の情報表示は、現状の技術的には可能であるが、いろいろ問題点があるため今回は採用することは避け、近い将来において再検討することが適当であろうという結論となった。

なお、今後の再検討などでの参考のため以下に現時点における検討概要について示す。

 

1. 電子海図システムの概要

電子海図表示システム(ECDIS)は、大別すると、デジタルデータ化した海図情報の集合体(データベース)である航海用電子海図(ENC)と当該ENCを他の航海関係情報とともに表示できる電子海図表示装置(ECDIE)から構成される。

電子海図表示システム(ECDIS)は船舶を安全かつ効率的に運航するためのシステムとして世界各国において開発されつつあるが、国際海事機構(IMO)と国際水路機構(IHO)は、海図同等物として安全航行に寄与することができるよう、同装置の世界的な統一機能を定めた「ECDIS性能基準」を策定した。

また、電子情報システムに関する水路学的要求委員会(CHRIS)ではECDISの海図内容と表示に関する仕様書(S−52)及び数値化された水路データの変換に関するデジタルデータ交換基準(S−57)が作成されている。

つぎに、この電子海図(ENC)を表示する装置を開発する場合に考慮すべき主な項目などについて記す。

 

1.1 ECDIS性能基準(IEC 1174)

IMOの航行安全小委員会(NAV)とIHOの電子海図表示システム委員会(COE)による電子海図調和グループ(HGE)において検討されたECDIS性能基準で、「ECDISの基本的機能は、安全航行に寄与することである。」「適当なバックアップ装置を備えた

 

 

 

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